あいりっしゅ音楽理論①~ミクソリディアンの曲
こんにちは,コンサーティーナのRyoです。
練習会でスケールの話が出たので,この機会に「あいりっしゅ音楽理論」と題して私の確認の意味も込めてまとめてみることにしました。
前提として,アイリッシュ音楽のメロディーは,主に教会旋法(チャーチモード)で説明することができます。
教会旋法とは,現在のメジャー(長調)やマイナー(短調)というようなスケールや調性が生まれる元となったものです。
教会旋法には7つの種類があります。ピアノの白鍵で,ドから始まる7音の関係がイオニア,レから始まる7音の関係がドリア……というように覚えていくと分かりやすいです。
上の表の通り,アイリッシュ音楽では,このうち主に4つの旋法がよく使われています。
①イオニアンスケール=メジャースケール(長音階)
②ドリアンスケール
③ミクソリディアンスケール
④エオリアンスケール=マイナースケール(短音階)
特に,②と③がケルト音楽特有の雰囲気をつくり出す要因となっているようです。
★今回はミクソリディアンスケールの曲を見てみましょう。
アイリッシュの曲で多く見られるのはDミクソリディアンとAミクソリディアン。
ミクソリディアンスケールは,7つ目の音(第7音)以外は普通のメジャースケールと同じです。
それでは,第7音に注目して実際のチューンを見てみましょう。
【純粋なDミクソリディアンのチューン】
Blarney Pilgrim
楽譜→https://thesession.org/tunes/5
ご覧の通り,2小節目の最後の音(C)がナチュラルになっています。
これがもしDメジャーならC#になるはずです。
この7つ目の音(第7音)が,ミクソリディアンの特徴となる音です。
【メジャースケールと行き来するので少し分かりづらいミクソリディアンのチューン】
Banish Misfortune
楽譜→https://thesession.org/tunes/9
出だしのここまでの部分を見ると,先ほどと同じ普通のmixと思えますが……
Aパート4小節目に突然C#が!
この部分はmixではなくメジャースケールだと言えます。
行ったり来たりしているようです。
Old Bush
楽譜→https://thesession.org/tunes/1499
こちらはさらに複雑。CとC#が入り乱れています。
ミクソリディアンとメジャーが混ざることにより,不思議な感じ,独特の雰囲気が強まるように感じます。
伴奏のコード付けを迷うとの話をよく耳にしますが,これが原因なんですね。
(※ミクソリディアンのチューンは,メジャーで普通に使うⅤ→Ⅰの終始を使わずⅦ→Ⅰが使われるなど,コードも変わってきます。コードの話はまたいずれ……。)
【別のkeyのメジャースケールと行き来するのでさらに分かりづらいミクソリディアンのチューン】
Jimmy Ward’s
楽譜→https://thesession.org/tunes/793
始まりは普通にGメジャーに見えます。しかし,フレーズ終わりの音はD。
GメジャーとDミクソリディアンを行き来していると捉えられるでしょう。
上記のThe Sessionでも15人が楽譜を登録していますが,2人だけがミクソリディアンと書いています。皆さんも迷っていますね。
【途中までミクソリディアンだと分からないチューン】
最近仙台セッションでよく出る人気の(?)
The Atholl Highlandersというチューンを見てみましょう。(この曲はアイリッシュに限らずスコティッシュでも演奏されます)
楽譜→https://thesession.org/tunes/107#notes6
(クリックすると上から6番目の楽譜が表示されます。これが仙台で出ているバージョンに近いと思います)
4パートあるチューンです。出だしはこんな感じ↓
1~3パート目までは第7音が出現しません。普通のAメジャーのチューンだと思っていると……
最後のパートでようやく第7音が出てきます。Aメジャーなら第7音はG#のはずですが,ここではGの音。これがミクソリディアンを決定づける音ですね。
聞いてみても,ここだけ雰囲気が若干違うことを感じると思います。
以上,アイリッシュ音楽におけるミクソリディアンスケールのチューンを4パターンに分類してみました。
私自身知らないチューンも多いので,これ以外にも様々なパターンがあるかと思います。
ご意見等お待ちしています!